木綿のこと

  • 2018.05.17 Thursday
  • 21:29

 

 

 

東京に越してきて、新しく感じていること、見つめ直していることがあります。

 

自然のものと向き合いながら手仕事で「もの」をつくることをしていると、どうしたって、素材や、環境などと向き合うことになります。

 

 

 

長年暮らしてきた町は、海があって、緑も豊か、里山もあり、棚田もあり、蛍も見られるようなところでした。

 

今、新たな住処として選んだのは、いわゆるイーストトーキョーと呼ばれる隅田川の東の下町です。

 

こりゃまた全然違う場所に移ったねと、よく言われます。

 

隅田公園からスカツリー

 

 

 

民藝のように、その場所の歴史や気候風土が背景にあり、素材が豊富にあるとか、必要に迫られてとか、技術が代々伝わっているとか、そうなるべくしてなるような「ものづくり」は、胸にストンと落ちるというか、健やかで美しいと思います。

 

手紡ぎ木綿にも産地と呼ばれる場所があって、長年積み重ねられてきた技術や知識の深さは圧倒的で、それを次世代に繋いでいる方々もその歴史の一部となって活動していらっしゃいます。

 

 

以前住んでいた葉山は、神奈川県の三浦半島の付け根の町。

 

かつて「三浦木綿」というものがあったそうで、文献にも残っているし、横須賀市自然・人文博物館にはワタに関する展示もあります。

 

私はここ数年、畑で自ら育て収穫したワタを、ほんの一部ですが紡いで布にしていました。

 

それは昔の人々の生活に思いを馳せながらのものづくりでもありました。

 

 

 

では、はてさて今は?というと、別の視点で、かつての人々の暮らしに意識が向いています。

 

今感じているのは、簡単に言えば「江戸」です。

 

 

江戸時代は、庶民の普段の衣服が麻から木綿に変わった時代。

 

柳田国男の「木綿以前の事」によると、その柔らかであたたかな肌触りや、染めや織りの作業がしやすいことで、日本人の生活を一変させたという木綿。

 

着心地の良さ、動きやすさが、人々の仕草を変え、シルエットを変えた。

 

また、染めの自由さが、今まで見るだけのものと思っていた紅や緑や紫を身に纏うことを可能にし、「心の動きはすぐに形にあらわれて、歌うても泣いても人は昔より一段と美しくなった。」といいます。

 

 

東海地方、畿内、瀬戸内海沿岸などは有数の棉作地域で、最大消費地江戸にも繰綿・糸・織物が集められて、今の日本橋あたりにはたくさんの木綿問屋が並んでいたそうです。

 

ただ、大々的に日本の農地での栽培、手紡ぎ手織りの木綿布がつくられていたのは、江戸時代のほんの短い時期。

 

現代でもそうですが、生活に欠かせない需要のたくさんある物は、普及に伴い機械化されたり合理化されたりしていきます。

 

木綿は社会の経済構造も変えたといわれます。

 

 

それがなんとなくドラマチックで、100万人都市江戸の時代の人々の活気や心意気、人情の機微とも重ねてしまいます。

 

庶民の、大衆の、格好良くもあり、馬鹿馬鹿しくもあり、哀しくもあるもの、、に心惹かれます。

 

そんなことを思いながらの木綿布づくりです。

 

 

今は畑仕事はしていないけれど、素材であるワタは自然の賜物、そしてつくる私も自然の一部。

 

自然と向き合うことに関しては変わっていません。

 

自然を敬い感謝すること、耳を傾けること、今に繋がる継承されてきたものに想いを馳せること。

 

その大切さを今まで以上に感じています。

 

 

コメント
こちらの生活はいかがですか?
これまでとは全く真逆だよね〜!
私の母は下町生まれの下町育ち。
私も小さい頃から永代橋のすぐのところに住んでいた祖母の家によく行っていました。
そのせいか、世界史専門で日本史苦手だったけれど(笑)
江戸の文化には何か親しみを感じています。
だから江戸博ガイド10年も続けたんだけどね…
東京育ちの棉の布も楽しみにしています。
  • いけさん
  • 2018/05/23 8:57 AM
コメントありがとう!
お母様は生まれも育ちも下町だったのですね。
下町、好きです。なんとなく肌に合うと思ってます。(特に呑んべえには。。)


江戸博に10年もいたのね〜!
永代橋近くにおばあ様のお家があったとは。
がっつり世界史勉強されてきた池さんがなぜ江戸なんだろうと思っていたんだけれど。
私は一応江戸が専攻だったけど、ご存知の通り学校にはほぼお世話になっていないので。。うぅ。
いろいろ教えて欲しいなぁ。
  • kokoito
  • 2018/05/23 10:34 AM
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